椎名 昂生

オフィス空間における家具の高さと配置が空間の高さ寸法の知覚に与える影響

 本研究は、オフィス空間における家具と作業姿勢に着目する。家具の高さと配置および作業姿勢が空間の高さ寸法の知覚に与える影響に焦点を当てたものである。

 近年、健康リスクの軽減や業務効率の向上のため、スタンディングワークの導入が進んでいる。これに伴い家具の寸法や配置が大きく変化している。空間寸法の知覚に影響を与える要因は多岐にわたるが、その中でも家具は、利用者の視界を遮蔽する要素として空間の印象に大きく関与する。しかし、従来の研究では、具体的な家具の寸法が空間の高さ寸法に与える影響については十分に解明されていない。

 本研究では、仮想環境技術を用いた被験者実験により、家具の高さ及び配置と作業姿勢が、空間の高さ寸法の知覚に与える影響を検証する。実験結果の定量的な分析により、屋内空間における家具の配置計画に資する知見を得ることを本研究の目的とする。

 実験はヘッドマウントディスプレイを核とする没入型仮想環境技術を用いた。まず、家具を配置した仮想空間の高さ寸法を実験参加者に記憶させ、その後家具のない空間に移動する。実験参加者の直感的な操作により、空間の高さ寸法が変化し、家具のない空間の高さ寸法を記憶した空間の高さ寸法と一致するように調節させた。そこで調節させた高さ寸法を計測する。この手法を用いて、椅座位に着目した実験Ⅰと立位に着目した実験Ⅱを実施した。

 結果として、椅座位において家具の高さが700mmの場合と家具の高さが800mmの場合では、統計的に優位な差が見られ、家具の高さが700mmの場合の方が空間の高さ寸法を大きく認識する傾向があった。また、同じく椅座位において全員が同じ方向を向いている同向型配置の際に、家具の高さが700mmの場合と家具の高さが800mm及び900mmの場合で統計的に優位な差が見られ、家具の高さが700mmの場合の方が空間の高さ寸法を大きく認識する傾向があった。つまり、家具の高さが低いほど、空間の高さ寸法を大きく知覚することが示唆された。

 椅座位での家具の高さや配置が空間の高さ寸法に影響を与えることが示唆され、屋内空間における家具の配置計画に資する知見を得ることができた。本研究における検証を深めるためには、実験方法の改善や空間を構成する様々な要素が与える影響を詳細に検証する必要がある。