IVEを用いて実験を行う4つの利点
IVE = immersive Virtual Environment / 没入型仮想環境インタラクティブ・ネス (=相互干渉(可能)性)
仮想環境内では被験者自身による空間要素の操作が可能になる。
現在、当研究室で用いている実験手法は以下二つに分類できる。
要素位置調整法
天井や壁などの位置を基準条件に合うようにコントローラで調整する中心位置探索法
空間や経路の中心に移動させ感覚量の変化を「ズレ」として計測する
アダプティブ・ネス (=自律調整(可能)性)
被験者の行為選択に応じて提示する環境や空間要素を操作できる。
気付かれないように操作をすることで無意識の行動を抽出できる。
例えば、当研究室では以下のような適用事例がある。
経路選択に応じた経路形状の変更
迷路内の分岐において最初に選んだ経路が行き止まりになるように仕組む
分岐まで引返しもう一つの経路を選び直せばそれがゴールへの道筋になる
→ 行き止まりでの引き返し方、分岐での逡巡を繰り返し計測できる注視位置に応じた情報表示・非表示
被験者の注視している位置を計測し
→ 注視位置に追従する黒丸を表示 → 中心視野を特定的に制限
→ 注視位置に応じて物体を非表示 → 中心視でのみ見える/見えない物体歩数に応じた情報提示
情報提示のタイミングを時間や距離ではなく、歩数カウントで決定する。
障害物の「3歩手前」のタイミングで、障害物の表示をオフにするなど。
→ 障害物に関する視覚情報がどのタイミングで活用されているかを計測
→ 被験者の身体性(身長・歩幅・速度)を考慮した与件の設定ができる皮膚電位データとの連携
皮膚電位の抑制が20秒以上続いたタイミングで刺激を提示する
→ 被験者が警戒を解いたタイミングを狙って、脅威・妨害刺激を提示できる
→ 被験者の個人差に対応した実験計画(データの信頼度の向上、実験高速化)
パーセプティブ・ネス (=主観体験(可能)性)
等身大での検証
空間の大きさや空間を構成する要素の効果を1:1のスケールで体験して評価できる
模型や写真を用いた実験と違い、身体運動や眼球運動のデータをそのまま分析できるスケール変化
子供の視点、鳥の視点など、あえてのスケール変化を実験の条件に設定できる
※ 鳥の視点と巨人の視点は異なることに注意されたい
インフィニト・ネス (=境界無化(可能)性)
現実には不可能な空間形状や空間接続を作り出すことができる
無限大(どこまでも広がる壁面、ゴールのない迷路)
被験者の進行に合わせて気づかれないように別の迷路を接続する
→ 限られた計測エリアの中で広大な迷路での経路探索を行わせることが可能
→ Redirected Walking、Dynamic Saccadic Redirection、無限回廊など無限小(瞬間移動、あるいは1/∞秒の空間接続)
基準空間での感覚量を記憶させたあと別の場所へ瞬間的に転送する
→ 「時間経過」という妨害刺激を排除し、記憶を維持したまま感覚量を再現
Reference
子供を対象とした研究や教育に対する IVEの使用例を紹介している心理評価、トレーニング、痛み解消のツールとしての使用例がある