大島 正暉

街路方向の誤認識が既視の街路を同定するまでの時間に及ぼす影響

いつも見慣れている場所が、見知らぬ場所に見えてしまう「風景異化」と呼ばれる現象が存在する。この風景異化という現象は、場所そのものを構成する要素を変化させたり、あるいは、人間の場所に対する認識を変化させることによって、既知の場所が未知の場所として立ち現れるとされる。この風景異化を意図的に引き起こすことができれば、環境の諸要素を変えずとも、心理的に異なる風景を作り出す新たな空間デザイン手法を提案できると考える。

本研究では、人間が環境内で自身の位置を定位する際に利用している「参照系」に着目し、参照系の誤認識が既視の街路を同定するまでの時間に与える影響を検証する。この検証によって風景異化の生起を定量的に分析し、風景異化の生起における、参照系の指示の操作の有効性についての知見を得ることを本研究の目的とする。360度立体カメラで撮影した街路映像を、ヘッドマウントディスプレイを介して仮想環境内で被験者に2回提示し、2回目の映像提示の際に、被験者がその街路を一度通過したことがあると判断するまでの時間を計測する。2回目の映像提示の際、1回目と同じ方向で街路方向を指示した場合と、あえて異なる方向で街路方向を指示した場合での街路の同定までにかかる時間を比較し、指示の正誤に生じた時間差を風景異化が生起し続けた時間として評価する。

解説動画:街路方向の指示と風景異化 大島正暉 10min

研究成果

19WM3151大島正暉.pdf