高野 眞之介
間接照明の配光特性が天井高の感覚量に及ぼす影響
本研究は、コーニス照明の配光特性の違いが天井高の感覚量に与える影響に焦点を当てたものである 。
近年、建築照明のデザインは、明るさの確保だけでなく、空間の雰囲気や印象を形成する重要な要素として注目されている 。これに伴い、まぶしさを抑えつつ良好な光環境を実現できる手法として間接照明がさまざまな用途の空間で取り入れられている 。空間の知覚に影響を与える要因は多岐にわたるが、その中でも天井高の感覚量は、空間の開放感や快適性に関わる重要な要素として空間の印象に大きく関与する 。しかし、従来の研究では、壁面の明るさや天井の色などが及ぼす影響は検証されているものの、間接照明の配光特性(光の指向性や照射分布の違い)が天井高の感覚量に与える影響については十分に解明されていない 。
本研究では、没入型仮想現実環境を用いた被験者実験により、コーニス照明の配光特性の違いが天井高の感覚量に与える影響を検証する 。実験結果の定量的な分析により、科学的根拠に基づいた設計指針の構築に資する知見を得ることを本研究の目的とする 。
実験はヘッドマウントディスプレイを核とする没入型仮想現実環境を用いた 。まず、特定の配光特性を持つコーニス照明を配置した照明空間の天井高さを実験参加者に記憶させ、待機空間を経たのち調整空間に移動する 。実験参加者の直感的な操作により、空間の天井の高さが変化し、調整空間の天井高さを記憶した照明空間の天井高さと一致するように調節させた 。そこで調節させた高さ寸法を計測する 。この手法を用いて、側壁が視野に含まれる狭小空間に着目した実験Ⅰと、空間の幅を拡張して側壁を視野から排除した大空間に着目した実験Ⅱを実施した 。
結果として、側壁が存在する実験Ⅰにおいて、照明と壁面の距離が150mmの場合と300mmの場合では統計的に有意な差が見られ、距離が150mmの場合の方が天井高を高く認識する傾向があった 。一方で、側壁が視野に入らない実験Ⅱの大空間においては、照明と壁面の距離による影響は確認されなかった 。つまり、側壁が存在する空間においては、壁面と照明の距離が近く壁面上部が強く照らされるほど、天井高の感覚量を大きく知覚することが示唆された 。
コーニス照明の配光特性や空間の縦横比(側壁の有無)が天井高の感覚量に影響を与えることが示唆され、建築空間の照明計画に資する知見を得ることができた 。本実験では、コーニス照明のみを設置した条件で検証を行ったが、実際の建築空間においては複数の照明器具を併用することが一般的である。そのため今後は、他の照明方式と組み合わせたより実践的な照明環境の構築や、空間の用途に合わせた適切な明るさの確保を含めた検証を進め、実際の照明設計により即した応用的な知見を深めていくことが課題である。