川崎 魁斗

生垣の高さと配置がプライバシーと景観に対する評価に与える影響

都市化に伴う住宅地の高密度化により、視覚的プライバシーと視環境満足度の両立が重要な課題となっている。本研究では、視覚的プライバシーと視環境満足度の両立を図るため、生垣を活用した新しい手法を、没入型仮想環境を用いて検討した。

実験Ⅰでは、生垣の高さと庭の奥行きを条件として、各条件下での生垣内視線透過率を測定した。実験条件として、生垣の高さを1000mm、1500mm、2000mm、庭の奥行きを2000mm、4000mm、6000mmとし、合計9つの条件を設定した。実験参加者には仮想環境内でこれらの条件を提示し、生垣の葉の量を調整するタスクを遂行させた。実験の結果、生垣の高さと視線透過率の間に正の相関関係が確認され、生垣が高くなるほど、視線透過率も大きくなることが明らかとなった。一方で、庭の奥行と視線透過率の間には有意な相関が見られなかった。視覚的プライバシーの評価においては、外部の情報量を抑制するよりも外部からの視線を遮ることが効果的である可能性が示唆された。また、視環境満足度の評価においては、生垣内視線透過率よりも窓から見える緑の量が重要である可能性が示された。

実験Ⅱでは、窓の開口幅と生垣の高さを条件とし、視環境満足度と視覚的プライバシーが両立される生垣の形状について評価した。実験条件として、窓の開口幅を1000mm、2000mm、3000mmとし、生垣の高さを1500mm、2000mmに設定した。これにより、異なる組み合わせの条件下で生垣内視線透過率を測定した。実験の結果、実験Ⅰと同様に生垣の高さと視線透過率の間に正の相関関係が確認された。一方で、窓の開口幅と視線透過率の間には有意な相関は見られなかった。また、居住者が視覚的プライバシーや視環境満足度を評価する際、窓の開口幅は生垣の視線透過率に影響を及ぼさない可能性が示唆された。この理由として、居住者が外部情報として量よりも内容を重要視している可能性が考えられる。

本研究から、以下の三点が明らかとなった。第一に、視覚的プライバシーと視環境満足度の両面において、生垣の高さが最も影響力のある要因であり、庭の奥行と窓の開口幅は有意な影響を示さなかった。第二に、視覚的プライバシーの観点では、通行人の視線を遮断できるかという点で生垣の高さが重要な役割を果たすことが示された。第三に、視環境満足度に関しては、居住者は生垣の視線透過率よりも開口部から見える緑の量の確保を重視することが明らかとなった。