上田 果林

窓の形状が在室者の精神的負担に及ぼす影響

居心地の良い窓際には、机や椅子が配置され、机上作業のための場所として設えられることも多い。しかし多くの一般的な窓では、窓外で時々刻々と様々な変化が生じており、その変化が机上作業に何らかの影響を与えていることは考えられる。特に通りに面した地上階に設けられることが多いカフェの窓際や、運動場に面した学校の教室の窓際などは、人の動きによる視覚刺激が、在室者に精神的な負担を与えていると考えられる。

そこで本研究では、仮想環境を用いた被験者実験を行い、精神的負担の生じにくい窓際の空間構成のあり方を検証することとした。実験では、窓がひとつだけある居室を仮想環境として構築し、ヘッドマウントディスプレイを通して被験者に体験させながら、窓外を「歩行者」が通過するときの精神的負担の変化を計測した。

検証では、窓の幅と窓外歩行者の通過速度を変数として、その組み合わせが在室者の精神的負担と作業集中度に与える影響を計測した。精神的負担の指標としては、窓外歩行者の通過時に出現する皮膚電位反応のパターンを用いた。また、被験者にタイピングタスクを課し、そのタスクの成績から机上作業に対する作業集中度を定量化した。実験の結果、窓幅が広い条件において窓外通行者への注目度が上がることにより、作業集中度が低下することが分かった。

研究成果

解説動画:窓の形状と窓外を通過する人影が在室者の精神的負担に及ぼす影響(卒業論文)

解説動画:窓の形状と窓外を通過する人影が在室者の精神的負担に及ぼす影響(卒業論文)