高橋 翼斗

歩行中の人間の認知特性に基づいた記憶に残りやすい場所の特徴抽出 -AEDの設置基準策定に向けた予備的検討-

本研究では、建物内において目的を持って歩行する際の視線の動きと記憶能力に着目し、日常の歩行時に視線が集まり、記憶に残りやすい場所を、仮想環境技術を用いた被験者実験を通して検証する。この研究によって、日常で視線が集まりやすく、記憶に残りやすいAEDの設置場所の指標を得ることを本研究の目的とする。

日本では、1年間で約7.9万人、7分に1人が心臓突然死により命を落としている。突然の心停止の際、AED(自動体外式除細動器)を使用することで、何もせずに救急隊を待っている場合に比べて、社会復帰率が約6倍も高くなる。ここ数年日本全国におけるAEDの設置数は増加しているものの、緊急時における実際の使用率は4.9%と極めて低い。これは設置場所の認知度の低さやAEDの統一された設置計画が存在しないことが原因であると考えられる。AEDの適正配置に関するガイドラインは存在するものの、AEDを設置する際に考慮すべきこととして記載されている内容は、「分かりやすい場所」「目に入りやすい場所」などといった曖昧な表現を用いた記述が多い。緊急時において素早く直感的に、AEDの設置された場所まで辿り着くためには、ごく一般的な歩行者にとっての「記憶に残りやすい場所」にAEDを設置する必要がある。「記憶に残りやすい場所」についての定量的な検証を行い、人間の認知特性に基づいたAED設置ガイドラインを策定することが急務である。

解説動画:歩行中の人間の認知特性に基づいた記憶に残りやすい場所の特徴抽出 5min

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