野田 ナオ

デスクパーティションの不透明パターンが作業環境の閉塞感に与える影響

オフィス環境では、個別に集中して作業できる空間を確保するため、デスクパーティションが広く使用されている。パーティションにより、作業者の座席の三方を囲み、外部からの視覚的刺激が遮断されることで、半個室的な作業空間を提供することが可能となる。ただしその一方で、過度な囲い込みは作業者に閉塞感や孤独感を与え、オフィスでの共同作業の利点を損なう恐れがある。そこで本研究では、閉塞感を軽減しつつ、効果的に視覚的領域の区分を実現する手法として、不透明パターンを取り入れたパーティションデザインに着目し、パターンの違いによる心理的効果を検証することとした。

実験1では、集中できるパーティションとして参加者が選好する不透明パターンの範囲を調査した。実験参加者はヘッドマウントディスプレイを着用し、仮想環境内でオフィスの机に座っている状況を体験した。その机を囲むパーティションを。集中しやすいように4つの設定項目を操作するよう求めた。実験の結果、天井高がパーティションの高さや不透明度を調査する主要な要因にはならないことが分かった。

実験2では、グラデーションの有無やパーティション上端の不透明の変化が閉塞感に与える影響を検討した。仮想環境の状況、実験手順は実験1とほぼ同様であるが、今度は閉塞感を選択基準としてパーティションの高さのみを操作させた。実験の結果、上端不透明度が上がるとパーティションの高さは高くなり、グラデーションのありとなしを比較すると、なしの方がありよりも高くなる結果となった。また、上端不透明度40%付近で不透明グラデーションに関する評価が変化する可能性も明らかとなった。また、透明度を高さで積分した値の透過量に着目して各条件を比較すると、閉塞感は透過量でのみ決まるのではなく、同じ透過量であってもそれがグラデーションによるものなのか一様なものであるのかで変化すると考えられる。

これらの知見は、オフィス環境の設計において、閉塞感を感じにくく集中しやすいパーティションを用いることで、知的生産性を高める座席レイアウトを実現することに寄与できると考えられる。特に、広いオフィス空間において、作業エリアを明確に区分けしながら、コミュニケーションの阻害が発生しないようにするためには、閉塞感を感じさせず集中しやすい不透明パターンを用いたパーティションを配置することが効果的であると考えられる。