土岐 美穂里

街路に面した店構えのオフセットが街路中心軸の知覚に及ぼす影響 

本研究では、街路に面した店構えのオフセットが街路中心軸の知覚に与える影響を検証した。ここで「街路中心軸」とは、被験者の感覚的な街路の中心位置と定義する。実験結果を定量的に分析することで、商店街の街路計画に資する知見を得ることを本研究の目的とする。

広い一本道の両側に建物を配置した空間を被験者に体験させ、最終的に街路の中心と認識した位置座標を1 秒毎に計測した。街路に面した店構えのオフセットを変化させ、被験者の街路中心軸の知覚に及ぼす影響について調べた。被験者は、20代の健康な大学生10名(男性7名、女性3名)である。仮想環境構築ソフトウェア:Vizard6.0(WorldViz社製)を用いて、両側に店舗のある街路空間を作成した。商店街を対象に歩道幅員の平均値を算出し、街路Cの道幅を6mと定めた。路Cを挟むように建物A, Bを作 成し、建物A,Bには街路Cに面するように中間領域A’,B’を設定した(図2)。ここで、店構えのオフセットをconcave(凹):入り込み型、convex(凸):浸み出し方と定義する。被験者には、街路空間の中心軸を感覚的に決めてもらうため、「商店街の1つの店舗から出てきて、両側にある店舗のどちらにも寄り道をせずに通り抜けられると思う、道の真ん中まで移動してください。」と被験者に教示をした。

中間領域の形態を要因とした多重比較検定から各条件の間で有意差が検出された。中間領域B’の形態変化では、baseとconcave_1,concave_2の間でそれぞれ有意差が検出されたが、baseとconvex_1,convex_2の間では有意差が検出されなった。その原因として、中間領域B’の形態変化では、被験者の初期位置が中間領域の内部となるため、convexの場合、中間領域を公的空間とみなし道路幅に含んで歩行した可能性が考えられる。さらに、初期位置の中間領域の有無と中間領域の形態を要因とした二元配置分散分析を行ったところ、個体間変動がある(p=0.0043)と分かった。そこで、 Bonferroni法による多重比較検定を行ったところ、中間領域A’,B’の全体で有意差が検出された。このことから、初期位置の中間領域の有無が被験者の街路中心軸の決定に影響を与えることが明らかとなった。

解説動画:街路に面した店構えのオフセットが街路中心軸の知覚に及ぼす影響 (建築学会大会)

解説動画:街路に面した店構えのオフセットが街路中心軸の知覚に及ぼす影響  5min

解説動画:AHFE2021発表動画  15min

研究成果