伊能 良太

周期的視覚刺激の空間内提示が感覚時間に及ぼす影響

有意義な時間は短く感じるのに対して、退屈な時間は長く感じる。こうした時間の経過に関する心的評価を感覚時間と呼び、その変化は誰もが経験的に承知している。感覚時間は人間が持つ基本的かつ普遍的な感覚の一つとして位置付けられる。

卒業研究では、PCディスプレイ上に周期的に点滅のみを繰り返す視覚刺激(周期的視覚刺激)を提示することで感覚時間を操作する手法を提案した。本研究では、卒業研究で提案した手法を、建築空間に適用することを考える。仮想環境技術を用いた被験者実験を通して、周期的視覚刺激を用いた提案手法が感覚時間にもたらす効果を実証し、建築空間への適用に向けた基礎的知見を得ることを本研究の目的とする。

第一段階の検証では、空間内に提示された周期的視覚刺激の点滅頻度を変化させることで、感覚時間を操作することができるか否かを検証した。実験結果から、一分間に90回の点滅頻度の周期的視覚刺激を周辺視野全体に提示すると、時間を長く感じることが明らかになった。点滅頻度の変化によって感覚時間を操作できる可能性が示唆される。

第二段階の検証では、周期的視覚刺激の提示範囲を被験者の周辺視野の一部に制限することにより、周期的視覚刺激の提示面積および提示位置の変化が感覚時間に影響を与えるか否かを検証した。実験結果から、左右の周辺視野にのみ周期的視覚刺激を提示すると、静止刺激条件に比べて、時間を短く感じることが明らかになった。周期的視覚刺激を周辺視野の一部に提示することで、感覚時間を操作できる可能性が示唆される。


解説動画:周期的視覚刺激の空間内提示が感覚時間に及ぼす影響_修論

解説動画:周辺視への周期的視覚刺激の提示が感覚時間に及ぼす影響_卒論

解説動画:Sense of Time While Perceiving Periodic Visual Stimuli by Peripheral Vision 15min